IFRS(国際会計基準)ポイント講座 第8回「無形資産」

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ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)Financial Reporting(FR)Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。

ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。

今回は、「無形資産」についてお伝えします。

第8回で学ぶ基準
IAS第40号「無形資産(Intangible assets)」

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無形資産とは

無形資産(Intangible assets)とは、物理的実態のない識別可能な非貨幣性資産のことをいい、ソフトウェア、特許権、著作権、映画フィルム、顧客名簿、ライセンスなどが該当します。

無形資産も、資産に該当するため、IASB概念フレームワークの資産の定義を満たしている必要があります。

資産とは、過去の事象の結果として企業が支配する現在の経済的資源をいう。経済的資源とは、経済的便益を生み出す可能性のある、企業が有する権利である。

A present economic resource controlled by the entity as a result of past events. An economic resource is a right that has the potential to produce economic benefits.

IFRS(国際会計基準)ポイント講座 第1回「IASB概念フレームワーク」

また、識別可能という点は、「その資産単体で売却することができるか」が判断のポイントとなります。

購入した無形資産の当初測定

ソフトウェアなど、外部から購入した無形資産の当初測定や減価償却は、基本的には有形固定資産と同様になります。

無形資産の取得原価は、購入価格及び使用や設置のための直接帰属費用(弁護士費用などの法定費用、試験費用など)が含まれます。

減価償却は、資産が意図する使用が可能となった時点から開始しなければなりません。実際に使用を開始した時点ではないので、注意が必要です。

ACCAの試験においては、無形資産の減価償却方法は定額法(Straight line method)が使用され、耐用年数や著作権などの有効期限にわたって減価償却を行います。

なお、有形固定資産の減価償却の英語は「Depreciation」が使用されますが、のれんを含む無形資産の減価償却の英語には「Amortisation」が使用されますので、注意しましょう。

研究開発費

無形資産に関わる問題では、研究開発費(Research and development cost)が最もよく登場します。

研究開発費は、その名前の通り研究費と開発費からなり、会計上の扱いは明確に分かれています。

研究費

研究費とは、研究(Research)のための支出であり、発生時に費用処理します。研究費が資産化されることは絶対にありませんので、研究費=費用と覚えましょう。

開発費

開発費とは、開発(Development)のための支出であり、以下の6要件の全てを満たした場合に資産化しなければなりません。以下の一つでも満たしていない場合は、研究費となるため発生時に費用処理します。

  1. 無形資産を完成させ、使用又は売却するという企業の意思がある
  2. 無形資産を使用又は売却できる能力
  3. 使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性
  4. 無形資産の開発を完成させ、使用又は売却するため必要な、技術的、財務的資源の利用可能性
  5. 無形資産の開発に関わる支出を信頼性をもって測定できる能力
  6. 無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法の立証

以上の6要件を簡単に英語で記載すると、以下のようになり、それぞれの頭文字をとり、SECTORと覚えましょう。

  1. Sell/use
  2. Commercially viable
  3. Technically feasible
  4. Resources to complete
  5. Measure cost reliably(Expense)
  6. Probable future economic benefits(Overall)

実務的には、この各要件を満たすかどうかはの判断は簡単ではありませんが、ACCAの問題としては、6要件をそれぞれを詳細に検証する問題は出題されません。

6要件に当てはまるかどうかといった問題が主流になるので、6要件はしっかり覚えておきましょう。

開発費については、完成するまで減価償却は行われません。開発が完了し、資産の意図する使用が可能となった時点から減価償却を開始します。

また、完成前の資産化された開発費は、期末日において減価償却の対象ではありませんが、減損の判定は行わなければなりませんので、注意が必要です。

なお、資産化された開発費は、財政状態計算書の固定資産の部に表示されます。

自己創設無形資産

自社で創設したブランド名やマストヘッド(新聞や雑誌の表題など)は無形資産として認識することはできません。

ブランド名やマストヘッドは、企業全体としてのビジネスの発展と不可分のものであり、ブランド名やマストヘッドそのものの原価(コスト)を測定できないため、6要件のうち、「5. 無形資産の開発に関わる支出を信頼性をもって測定できる能力」そ満たしません。

単語帳

無形資産Intangible assets
物理的実態のないNo physical substance
識別可能なIdentifiable
非貨幣性資産Non-monetary assets
経済的資源Economic resources
当初測定Initial recognition
減価償却Amortisation
定額法Straight line method
直接帰属費用Directly attributable costs
法定費用Legal fees
試験費用Testing costs
研究開発費Research and development cost
支出Expenditure
資産化Capitalisation
要件Criteria
減損Impairment
自己創設無形資産Internally generated intangible assets
ブランド名Brands
マストヘッドMastheads

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