ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)、Financial Reporting(FR)、Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。
ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。
今回は、「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」についてお伝えします。
第10回で学ぶ基準
IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業(Non-current assets held for sale and discontinued operations)」
IFRS第5号の目的とは
売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業(Non-current assets held for sale and discontinued operations)という基準の目的は、企業に対して処分予定の非流動資産や事業を開示することにより、財務諸表の利用者に対して業績の理解や将来の業績見積もりに寄与する情報を提供することです。
売却目的で保有する非流動資産
売却目的で保有する非流動資産(Non-current asset held for sale)とは、その資産への投資額の残額(帳簿価額)を、資産の継続使用によってではなく、主にその売却によって回収することを目的とする、非流動資産(又は処分グループ)の分類になります。処分グループとは、単一の取引により売却される資産グループのことを指します。
「売却目的保有(Held for sale)」として分類されるためには、以下の両方を満たす必要があります。
- 資産が現状(Present condition)において直ちに売却が可能(Available for immediate sale)
- 売却の可能性が非常に高い(Highly probable)
「売却の可能性が非常に高い」とは、以下の状態を全て満たしていることを言います。
- 経営陣が資産(又は処分グループ)の売却計画の実行にコミットしている
- 買手を選定及び売却のための具体的な計画が開始されている
- 合理的な価額にいおて活発に売買が行われている市場がある
- 売却目的保有に分類された日から12ヶ月以内に売却が成立する可能性が高い
- 売却計画に重要な変更(Significant changes)の発生又は撤廃される可能性が低い
売却目的で保有する非流動資産に分類された後は、減価償却は行われず、実際に売却された際は、除却損益として認識されます。
売却目的で保有する非流動資産の測定
売却目的で保有する非流動資産は、帳簿価額(Carrying value)と売却費用控除後の公正価値(Fair value less costs to sell)のいずれか低い金額で測定する必要があります。
帳簿価額が売却費用控除後の公正価値を上回っている場合、差額は減損損失(Impairment)として当期の損益で認識します。
もし売却目的で保有する非流動資産が、もともと再評価モデル(Revaluation model)を使用して測定されている場合は、売却目的保有に分類される直前の公正価値で再評価し、その後売却費用控除後の公正価値で測定されます。
つまり、売却費用の金額の分だけ費用化されるということになります。
再評価モデルの詳細は第4回「有形固定資産」をご覧ください。
売却目的で保有する非流動資産の表示
売却目的で保有する非流動資産は、財政状態計算書において、他の資産から区分して表示する必要があります。
以下は、財政状態計算書の抜粋になります。
財政状態計算書 | $’000 | $’000 |
固定資産 | ||
有形固定資産 | X | |
無形資産 | X | |
金融資産 | X | |
繰延税金資産 | X | |
X | ||
流動資産 | ||
売掛金 | X | |
棚卸資産 | X | |
現金及び現金同等物 | X | |
X | ||
売却目的保有資産 | X | |
資産合計 | X |
非継続事業
非継続事業(Discontinued operation)とは、すでに処分されたか、又は売却目的に分類される企業の構成単位(Component of an entity)であり、かつ、以下のいずれかを満たすものをいいます。
- 独立した主要な事業分野(Line of business)又は営業地域(Geographical area of operations)
- 独立した主要な事業分野又は営業地域を処分するための単一の計画(Single co-ordinated plan)
- 転売(Resale)のみを目的として取得された子会社(Subsidiary)
企業の構成単位とは、企業の他の部分から明確に区分できる事業などを言います。
また、企業の他の部分から明確に区分できる事業であっても、その事業が企業にとっって主要な事業分野や営業地域に該当しない場合は、非継続事業に分類する必要はありません。
非継続事業の測定に特別な規定はありませんので、認識が中止されるまで、従来の方法に従って測定されます。
非継続事業の表示
非継続事業は、損益計算書において継続事業(Continuing operations)と区分して表示する必要があります。また、過年度の比較情報(Comparative)を修正再表示する必要があります。
以下は、損益計算書の抜粋になります。
財政状態計算書 | $’000 | $’000 |
継続事業 | ||
税引前利益 | X | |
継続事業に係る純利益 | X | |
非継続事業 | ||
非継続事業に係る収益 | X | |
非継続事業に係る費用 | X | |
法人税等 | X | |
非継続事業に係る当期純利益 | X | |
非継続事業の売却等による損益 | X | |
法人税等 | X | |
非継続事業の売却等による純利益 | X | |
非継続事業に係る純利益 | X | |
当期純利益 | X |
単語帳
売却目的で保有する非流動資産 | Non-current assets held for sale |
非継続事業 | Discontinued operations |
現状 | Present condition |
即時売却が可能 | Available for immediate sale |
売却費用控除後の公正価値 | Fair value less costs to sell FVLCTS |
減損損失 | Impairment |
再評価モデル | Revaluation model |
有形固定資産 | Property, plant and equipment |
無形資産 | Intangible assets |
金融資産 | Financial assets |
繰延税金資産 | Deferred tax assets |
売掛金 | Trade receivable |
棚卸資産 | Inventories |
現金及び現金同等物 | Cash and cash equivalent |
非継続事業 | Discontinued operation |
企業の構成単位 | Component of an entity |
事業分野 | Line of business |
営業地域 | Geographical area of operations |
単一の計画 | Single co-ordinated plan |
転売 | Resale |
子会社 | Subsidiary |
継続事業 | Continuing operations |
比較情報 | Comparative |
税引前利益 | Profit before tax |
継続事業に係る純利益 | Profit from continuing operations |
非継続事業に係る当期純利益 | Profit from discontinued operations |
当期純利益 | Profit for the year |
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