ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)、Financial Reporting(FR)、Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。
ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。
今回は、「有形固定資産」についてお伝えします。
第4回で学ぶ基準
IAS第16号「有形固定資産(Property, plant and equipment)」
固定資産とは
財務諸表の固定資産の部は、大きく有形固定資産と無形固定資産、その他固定資産に区分されます。
無形資産は、ソフトウェアや商標権、特許権などがあり、その他固定資産は、長期貸付金などが該当します。
この講座では、主に有形固定資産に関わる基準について学習します。
有形固定資産
IASの基準名が「Property, plant and equipment」となっていますが、ACCAの試験においては、土地や建物、工場、機械装置、器具備品、車両運搬具などを全部ひっくるめて「PPE」と表記することが多くあります。ここでも「PPE」と表記します。
有形固定資産の当初測定
PPEを購入した際に計上する金額(取得原価)には、以下のものが含まれます。
- 購入価格
- 使用や設置のための直接帰属費用(人件費、運搬費、税金費用など)
- 原状回復費(現在価値)
使用や設置のための直接帰属費用には、PPE購入や設置にかかる人件費、運搬費、設置費用、固定資産税などの変換されない税金費用などが含まれます。
有形固定資産の事後測定
PPEは、一度計上した後は、通常定額法や定率法で減価償却を行いますが、IFRSではこれを「原価モデル(Cost model)」といいます。原価モデルでは、財政状態計算書の計上額は、取得原価から減価償却累計額及び減損を引いた金額になります。
原価モデルの他に、IFRSは期末日でPPEを再評価する「再評価モデル(Revaluation model)」を適用することができますい。再評価モデルでは、定期的にPPEを市場価値で計上し直し、その後は新たに計上された金額をベースに減価償却を行います。
再評価の際に、市場価値が簿価を上回る分の利得は、その他包括利益で認識され、再評価剰余金(Revaluation surplus)などの科目で、直接株主資本の増加として認識されます。なお、そのPPEを売却した際も、その他包括利益から損益への振り替え(Recycle)は行われません。
包括利益計算書上での表示場所については、第2回「財務諸表の表示」をご覧ください。
企業は、この原価モデルと再評価モデルを選択することができますが、再評価モデルを採用した際は、以下のことに注意する必要があります。
- 定期的に市場価値を確認し、再評価価額を最新に保つ
- 資産クラスごとに選択しなけえればならない(資産ごとではない)
- 再評価価額から残存価額を控除し、耐用年数にわたり減価償却する
もし市場価値が簿価を下回る場合で、以前に再評価剰余金を計上している場合、まず再評価剰余金を取り崩し、再評価剰余金でも足りない場合は、差額を損失として損益計算書で認識します。
注意点として、利得はその他包括利益で認識されましたが、損失は包括利益としてではなく、直接損益として認識されます。
有形固定資産の減価償却
ACCAの試験において、減価償却は下記の2種類が登場します。
- 定額法(Straight line method)
- 定率法(Reducing balance method)
減価償却は、資産が意図する使用が可能となった時点から開始しなければなりません。実際に使用を開始した時点ではないので、注意が必要です。
もし耐用年数や残存価額の見積もりに変更が生じた際は、その時点から新しい耐用年数や残存価額を適用し、過去に遡っての修正は必要ありません。
もし、PPEが複合資産(Complex assets)に該当する場合は、構成要素(Component)ごとに減価償却を行わなければなりません。例えば、航空機の機体とエンジンは、別々に減価償却を行います。
単語帳
有形固定資産 | Property, plant and equipment |
固定資産 | Non-current assets |
無形資産 | Intangible assets |
ソフトウェア | Software |
商標権 | Trademark |
特許権 | Patent |
長期貸付金 | Long-term loan |
土地 | Land |
建物 | Building |
工場 | Plant Factory |
機械装置 | Machinery |
器具備品 | Equipment |
車両運搬具 | Vehicle |
当初測定 | Measurement at recognition |
購入価額 | Purchase price |
直接帰属費用 | Directly attributable costs |
原状回復費 | Costs to dismantle/restore |
事後測定 | Subsequent measurement |
原価モデル | Cost model |
再評価モデル | Revaluation model |
市場価値 | Market value |
再評価剰余金 | Revaluation surplus |
減価償却費 | Depreciate |
減価償却累計額 | Accumulated depreciation |
残存価額 | Residual value |
耐用年数 | Useful life |
定額法 | Straight line method |
定率法 | Reducing balance method |
複合資産 | Complex assets |
構成要素 | Component |
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