IFRS(国際会計基準)ポイント講座 第6回「借入コスト」

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ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)Financial Reporting(FR)Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。

ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。

今回は、「借入コスト」についてお伝えします。

第5回で学ぶ基準
IAS第23号「借入コスト(Borrowing costs)」

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借入コスト

借入コストとは、資金の借入れに関連して発生する利息やその他のコストのことをいいます。例えば、借入金や社債の利息費用、リース負債に関する利息部分あります。

借入金の利息は、その期の費用として認識することが通常の処理ですが、IFRSでは特定の条件を満たす場合、資産化しなければなりません。

IFRSでは、適格資産の取得、建設、製造に直接起因する借入コストについては、その資産の取得原価の一部として資産化し、その他の借入費用については発生した期に費用処理することを要求しています。

適格資産とは、意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を必要とする資産をいい、製造に概ね1年以上かかる棚卸資産や建設、無形資産などが該当します。

ACCAの試験においては、借入コストに関連する問題での適格資産は建設のみと考えて大丈夫です。

また借入金は、特定借入金(Specific borrowings)一般借入金(General borrowings)に分類されます

特定借入金は、適格資産の建設のためだけに借り入れられた資金であり、一般借入金は、適格資産の建設のためだけではない、全般的な運転資金のことを指します。

一般借入金は、加重平均金利により借入コストを計算する必要があります(一般借入金の資産化の例参照)。

借入コストの資産化

借入コストは、適格資産の建設期間にわたって資産化する必要があります。ただし、その借入金を使って得た収益を控除する必要があります。

その借入金を使って得た収益とは、例えば10億円を借り入れた時に、すぐその10億円が必要とは限らず、まず5億円が必要になり、6ヶ月後に残りの5億円が必要になるとした場合、残りの5億円を株式や社債などに投資し、6ヶ月運用して得た0.5億円の収益をいいます。

その借入金を使って得た0.5億円を、資産化する借入コストから控除しなければなりません。

資産化は、以下の全てを満たした時から開始されます。

  • 適格資産に関連する支出が開始されている
  • 借入コストが発生している
  • 適格資産の建設に関わる活動が実際に開始されている

資産化は、適格資産が使用が可能になった時点で終了となります。減価償却費の開始時期と同様、資産が実際に使われているかどうかは関係なく、使用が可能になった時点ということに注意が必要です。

また、建設がストップしている期間も資産化は中止されます。ACCAの問題としては、建設期間中のストライキや大雨などの天候悪化による建設活動の中止が頻出のシチュエーションです。

特定借入金の資産化の例

A社は2000年1月1日にPPE(適格資産)の建設を開始し、それに伴い10億円を借り入れました。借入に伴う金利は6%であり、6月1日から8月1日までストライキにより建設が中止されていました。

A社の期末である2000年12月31日に資産化しなければならない借入コストは、以下の通り0.5億円になります。

10億円×6%×(10/12)=0.5億円

建設の途中で2ヶ月間ストライキにより中止されていたため、10ヶ月分のみ資産化されます。

一般借入金の資産化の例

B社は、2000年に以下の借入金を保有していました。

  • 30億円(金利5%)
  • 45億円(金利4%)

B社は2000年1月1日に、すでに保有している借入金を使いPPE(適格資産)の建設を開始しました。2000年1月1日に10億円を使い、7月1日に15億円を使いました。

B社の期末である2000年12月31日に資産化しなければならない借入コストは、以下の通り計算します。

  1. 加重平均金利の計算
  2. 資産化する借入コストの計算

1. 加重平均金利の計算は、まず各借入金の金利費用を計算し、合計の金利費用を借入金全体で割ります。

30億円×5%=1.5億円
45億円×4%=1.8億円

合計の借入金=75億円
合計の金利費用=3.3億円

加重平均金利=3.3億円/75億円×100%=4.4%

よって、加重平均金利は4.4%となります。

2. 資産化する借入コストの計算は、計算した加重平均金利を使用して算出します。

10億円×4.4%=0.44億円
15億円×4.4%×(6/12)=0.33億円

よって、資産化する借入コストは0.44億円+0.33億円=0.77億円となります。

単語帳

借入コストBorrowing costs
支出Expenditure
適格資産Qualifying asset
資産化Capitalisation
借入金Borrowing
社債Bond
利息Interest
建設Construction
特定借入金Specific borrowings
一般借入金General borrowings
加重平均金利Weighted average rate of interest
ストライキStrike

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