ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)、Financial Reporting(FR)、Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。
ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。
今回は、「政府補助金」についてお伝えします。
第5回で学ぶ基準
IAS第20号「政府補助金(Government grants)」
政府補助金
企業は、事業に対する補助金や機械装置購入の際の補助など、政府から補助金を受け取ることがあります。この補助金は、以下を満たして場合に認識することができます。
- 補助金の交付に付帯する条件を全て満たしている
- 実際に補助金を受領している
繰延収益アプローチ
政府補助金は、繰延収益アプローチ(Deferred income approach)で認識する必要があります。補助金の認識時に全額負債として計上し、補助金の条件に関わる支出が認識される期間にわたって、機械的に収益を認識します。
例えば、従業員を3年間雇用することが条件になっている場合、(従業員の給与が上昇しない前提で)補助金の3分の1を、3年間にわたって認識することになります。
補助金が償却性資産の購入に使用された場合、減価償却期間と同様の期間にわたって、減価償却方法と同じ方法で認識します。
直接減額方式
IFRSでは、償却性資産の購入に使用された場合、繰延収益アプローチの他に、直接減額方式(Direct write-off method)を採用することも可能になっています。
直接減額方式は、交付された補助金を対応する資産の簿価から直接控除します。簿価が下がることにより減価償却費が小さくなるため、費用のマイナスとして補助金を認識していることになります。
繰延収益アプローチと直接減額方式は、会計処理は異なりますが損益にに及ぼす影響は同じになります。詳しくは以下の例をご覧ください。
政府補助金の例
A社が10億円の償却性資産を購入し、政府補助金2億円が支給されました。この償却性資産の耐用年数は10年で、残存価額はゼロとし、定額法により減価償却します。
この場合は、政府補助金が支給される対象が償却性資産に該当するため、繰延収益アプローチまたは直接減額方式のいずれかを適用して政府補助金を認識します。
繰延収益アプローチ
まず補助金2億円を全額繰延収益(負債)として認識します。その後、補助金の条件に関わる支出が認識される期間にわたり機械的に収益を認識することになります。
この例の場合は、減価償却費が補助金の条件に関わる支出に該当するため、減価償却費が認識される期間にわたり、減価償却費の計算方法と同じ方法で繰延収益を損益に振り替えていきます。
つまり、この2億円は耐用年数である10年にわたり、定額法によって収益を認識することになり、
2億円÷10年間=0.2億円
で、毎年0.2億円ずつ収益を認識します。
直接減額方式
まず補助金2億円を償却性資産から控除するため、償却性資産が8億円で財政状態計算書に計上されます。
政府補助金がなかった場合の減価償却費は、
10億円÷10年間=1億円
で、毎年1億円の減価償却費を計上します。一方政府補助金を控除した場合は、
8億円÷10年間=0.8億円
で、毎年0.8億円の減価償却費となります。
政府補助金を控除した場合としていない場合を比べると、控除した場合の費用が0.2億円少なくなっています。
つまり、繰延収益アプローチでは0.2億円を収益として認識し、直接減額方式では0.2億円の費用のマイナスとして認識されるため、最終的な利益(損失)に与える影響は同じになります。
政府補助金の返済
補助金を交付された後に、補助金交付条件などを満たさなくなり、補助金を返済しなければならなくなった場合、返済しなければならなくなった時点以前の修正は必要ありません。
返済額の取り扱いについては、まず残っている繰延収益を全額取り消します。返済額が残っている繰延収益を超えている場合は、超えた部分をその期の費用として認識します。
単語帳
政府補助金 | Government grants |
繰延収益アプローチ | Deferred income approach |
償却生資産 | Depriciating assets |
直接減額方式 | Direct write-off method |
耐用年数 | Useful life |
残存価額 | Residual value |
定額法 | Straight line method |
支出 | Expenditure |
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