ACCA(英国勅許公認会計士)とUSCPA(米国公認会計士)の比較

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海外の会計士資格として頻繁に耳にするのが米国公認会計士(USCPA)で、英国勅許公認会計士(ACCA)は、日本ではかなりマイナーな資格です。

そこで、ACCAの特徴やメリットなどを、USCPAと比較して紹介します。

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会計基準

ACCAは国際会計基準(IFRS)に準拠した資格であるのに対し、USCPAはアメリカの会計基準(USGAAP)に準拠した資格です。

IFRSはその名の通り国際的な会計基準であり、世界中の国々が、自国の会計基準としてそのままあるいは多少の修正を加えてIFRSを採用しています。また、日本や米国など自国の会計基準をIFRSへ近付け、会計基準間の差をなるべく無くしていくように改正しています。

IFRSについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

ローカルルールである日本の会計基準(JGAAP)やUSGAAPと比べ、世界のビジネスに与える影響は比較にならないほど大きいです。

日本においても、大手企業から中小企業においても、海外取引や海外拠点の設置など、国際的なビジネスを行うのは今や日常茶飯事です。

また、近年のIFRSの拡大を受けて、これまでUSGAAPを適用してきた日本の大手企業もIFRSへ移行しており、東証における株式時価総額では、2014年には一桁%だったIFRS適用企業も、2015年にはUSGAAP適用企業との割合が逆転し、2020年には適用予定企業も含めれば東証株式時価総額の3分の1以上を占めています。

このような環境においては、経理や財務担当者等が業務の中でIFRSに触れる機会も今後ますます増えていくことが考えられます。

USCPA試験においては、USGAAPとIFRSの主要な差異が解消されたということを理由に2021年からIFRSがUSCPA試験範囲から除外されます。

そのため、USCPAを受験してUSGAAPを習得するよりも、ACCAの受験を通してIFRSを学習した方が、今後のビジネス環境を見据えた選択であるといえます。

資格が通用する国の数

IFRSが世界中で適用されている会計基準だということにも関連しますが、ACCAは国際的な認知度が高く、多くの国で現地会計士資格と相互認証制度により、その国の会計士として認証がもらえ、その他にも非常の多くの国で現地の会計士協会に登録できたり、現地会計士と同等の専門サービスを提供することができあます。

ACCAは、UAE、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、香港、マレーシアと相互認証制度を持っており、その他イギリス、アイルランド、トルコ、アルメニア、グルジア、マルタ、キプロス、ギリシャ、カリブ海及び中央アメリカ、アフリカの各地域、マカオ、台湾、シンガポール、ベトナム、ブルネイ、ラオス、カンボジアなどでACCAを活用することができます。

ACCAの相互認証制度の詳細は、ACCAのWebサイトをご覧ください。

一方USCPAは、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、香港、アイルランド、メキシコ、スコットランドと相互認証制度を持っています。かつてはシンガポールとも相互認証していましたが、2016年に終了しています。

ACCAとUSCPAのどちらとも相互認証している国の多くは被っているので、会計士としてアメリカで働きたい場合はUSCPA、それ以外の場合はACCAという考え方でもいいかもしれません。

ACCAはイギリスだけではなく様々な国で活躍できるチャンスがあり、将来の選択肢の幅を増やすことができる選択といえます。

受験までのハードル

ACCAは、USCPAと比較して受験資格を満たすことが非常に簡単です。日本の学校の場合、大学や専門学校を卒業していれば、学部や専攻等、単位等は一切関係なく受験できます。

一方USCPAは受験資格を満たすためのハードルが高いです。州によっても異なりますが、一番緩いと言われる要件でも、受験の時点で4年生大学の学位及び会計15単位取得していることが必要になります。

また、受験資格の他に、「会計士」と名乗るためにもまた別の要件を満たす必要があります。

ACCAは、全科目合格のほか、36ヶ月以上の会計に関する実務経験が必要となります。会計に関する実務経験は、監査や経理、財務、税務、コンサルなど幅広い分野が認められています。

実務要件の詳細は、こちらの記事をご覧ください。

USCPAは、全科目合格後、多くの人がライセンスを取得する州であるワシントン州でのライセンス取得要件は、総取得単位150、会計24単位、ビジネス24単位、さらに1年(2,000時間)以上の実務経験が必要となります。

このため、USCPAではほとんどの場合に最初の科目を受けるまでに追加の単位を取得する必要があり、予備校等のサービスなしでは受験することすら難しくなっています。

試験自体はACCAとUSCPA共に日本から受験することが可能です。

試験の日程は、ACCAは毎年3月、6月、9月、12月の年4回試験が行われており、1年間に各科目最大4回受験することができます。それぞれの科目ごとに日時が固定されており、平日に実施されるため、スケジュールの調整がしにくい傾向にあります。ただし、2020年9月の試験からいち早くリモート試験を導入しており、日本からでも19時や20時から受験することが可能になったため、ハードルが下がったといえます。

USCPAの受験日程についてはかなり柔軟で、各科目について3ヶ月単位で最大年4回まで受験でき、日程は土日を含めてほとんど1年中開催されています。また、今後は3ヶ月単位といった制約も撤廃され、ほとんどいつでも受験することが可能になります。

試験のハードル

日本の会計士試験と違い、ACCAもUSCPAも基本的には働きながら受験することになると思います。ACCAもUSCPAも、どちらも科目合格制を採用しており、最終合格までに、ACCAは13科目、USCPAは4科目に合格する必要があります。

一見、数が少ないUSCPAの方が魅力に感じるかもしれませんが、ACCAもUSCPAも、最終的な試験範囲や知識量に違いはないと言われています。

ということは、USCPAの方が科目数が少ない分、1科目当たりの範囲や知識量が多くなってしまいます。ACCAもUSCPAも働きながら勉強することを前提としているので、1科目あたりのボリュームが大きいと、なかなか勉強する時間を確保できないため、試験のハードルが高くなってしまいます。

同じ範囲でも、試験が細分化されている方が、働きながらでも合格を目指しやすいといえます。

アメリカでのUSCPAの受験者層は、基本的には大学や大学院で会計学を学び、BIG4などで実務要件を満たしながら受験する人が多いため、同じ働きながら受験すると言っても、日本人の受験勉強に比べても前提知識などに大きな差があります。(もちろん英語力の差もあります。)

また、ACCAとUSCPAでは、試験の合格基準も大きく異なり、USCPAは各科目75%以上が合格基準なのに対し、ACCAは各科目50%以上で合格となります。

また、ACCAは、USCPAに比べて記述式の試験が多くなっています。英語での記述式試験と聞いて難しそうと考えるかもしれませんが、専門書の論文のような文章は求められません。文章の一部や計算過程など、100%正解でなくても部分点がもらえるという、記述式ならではのメリットもあります。

英単語の暗記テストに例えると、一気に100単語暗記して75点で合格のテストと、20単語ずつ5回に分けて、なおかつ50点で合格のテストだと、どちらが取り組みやすいと言えるでしょうか。

やはり、後者だと思う方が大半だと思います。そのため、ACCAはUSCPAよりも働きながら取得する社会人に向いた資格といえます。

また、ACCAにもUSCPAにも、科目合格の有効期限があります。ACCAは最初のProfessional Moduleの試験に合格後7年以内に全ての試験位合格する必要があります。Knowledge ModuleとSkills Moduleに有効期限はありません。(2016年以前はありましたが、撤廃されました。)一方USCPAでは、最初の1科目合格から18ヶ月以内に全科目合格しなければ、18ヶ月を超えた科目から合格実績が取り消されます。18ヶ月は十分な気もしますが、忙しい社会人が働きながら受験していると、意外とすぐに過ぎてしまいます。

試験の内容

ACCAの試験の科目は、Knowledge Module(3科目)、Skills Module(6科目)、そしてProfessional Module(6科目)の3つのステージに区分されます。ACCA試験で受験できる科目は全部で15科目あり、Professional Moduleの6科目は、必須2科目と4科目から2科目を選択して受験することができます。

Professional Moduleの選択4科目は、以下から構成されています。

・Advanced Financial Management(AFM)
・Advanced Performance Management(APM)
・Advanced Taxation(ATX)
・Advanced Audit and Assurance(AAA)

このうち、多くの人はAFMとAPMを選択します。

ACCAやUSCPAの取得を目指す人で、取得後に監査や税務をやりたいという人は少ないと思います。

ACCAやUSCPAは会計士資格のため、もちろん監査や税務の最低限の知識は必要ですが、外国の税法を勉強しても、活かせる場面は少ないかと思います。

監査論についても、監査法人に入り監査をやりたいという訳でなければ、通常は監査を受ける側になるので、上級レベルの監査知識が必用となることはあまりありません。

ACCAでは、AAAとATXを受けないことが可能であり、AFMやAPMは様々なビジネス場面を想定した問題になり、実際の仕事にも活かすことができる科目のため、今後一切使わない知識を勉強しているということがありません。

一方USCPAは4科目全てが必須科目となります。FARではアメリカ政府会計が含まれていますし、アメリカ税法が試験範囲の7割を占めるREG、基礎から上級レベルまで含まれるAUDを全て受験しなければなりません。

取得後のキャリア

ACCAやUSCPA取得後のキャリアに関しては、どちらも日本で大手監査法人への転職は可能です。ほとんどの場合募集条件には日本の公認会計士かUSCPAとしか記載されていませんが、そもそもそれ以外の会計士資格を持っている人が少ないためわざわざ記載していないというだけで、会計士資格(全科目合格を含む)を取得している場合は大差ありません。

一般事業会社に転職する場合は、知名度の高いUSCPAが多少有利になるかもしれませんが、USGAAP適用企業が減り続け、IFRS適用企業がますます増えている現状では、ACCAという資格の特性をしっかり説明できれば、資格の違いで差はつきません。

また、一般事業会社への転職は資格の有無だけで判断されるものではなく、職務経験やコミュニケーション能力の方が重要視されるため、どちらの資格が有利ということはありません。

ACCA取得後のキャリアについては、こちらの記事でまとめています。

どちらを取得するべきか

ACCAとUSCPAを比較してきましたが、将来性や試験の内容から、このサイトではACCAをお勧めしています。

将来アメリカで働きたいなど、USCPAを取得する明確な理由がある場合は、USCPA一択になると思います。

どちらかが簡単とか、難しいとか、取りやすいかで決めるのではなく、自身の将来のキャリアアップや、海外で働いてみたいと言った理由に目を向けて、どの資格を取得するかを考えてほしいと思います。

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