IFRS(国際会計基準)ポイント講座 第7回「投資不動産」

ACCAの財務会計科目であるFinancial Accounting(FA)Financial Reporting(FR)Strategic Business Reporting(SBR)を中心に必要となる、IFRSの基礎知識についてお伝えします。

ACCAの科目試験に最低限押さえておきたいポイントを中心に解説していきます。学習の前提については、IFRSポイント講座 第0回「IFRS講座の前提」をご覧ください。

今回は、「投資不動産」についてお伝えします。

第7回で学ぶ基準
IAS第40号「投資不動産(Investment property)」

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投資不動産とは

投資不動産(Investment property)とは、賃貸料収入又は値上り益(キャピタルゲイン)、あるいはその両方を目的に保有する不動産(土地又は建物、建物の一部、又はその両方)のことをいいます。

建物の一部とは、例えばビル1棟を保有している場合で、1階部分をテナントとして貸し出し、2階より上を自社で利用する場合の1階部分が投資不動産に該当します。

下記の不動産は、投資不動産には該当しません。

  • 生産活動や、商品・サービスの提供に使用される、又は管理目的に使用される不動産(IAS第16号「有形固定資産」に該当する)
  • 通常の営業過程で販売される不動産(IAS第2号「棚卸資産」に該当)
  • 将来投資不動産として活用する予定である建設中の不動産(完成するまではIAS第16号「有形固定資産」に該当する)

投資不動産の当初測定

投資不動産の取得原価は、購入価格及び使用や設置のための直接帰属費用(人件費、運搬費、税金費用など)が含まれます。

投資不動産の事後測定

当初認識後は、有形固定資産と同じように減価償却を行う原価モデル(Cost model)と、毎期末に公正価値で再評価する公正価値モデル(Fair value model)があります。

原価モデル

原価モデルを採用した場合、投資不動産は、他の有形固定資産と同様に減価償却を行います。

公正価値モデル

公正価値モデルを採用した場合、投資不動産は毎期末に公正価値で再評価されます。再評価の際の差額である利得や損失は、直接その期の損益で認識されます。

公正価値モデルを適用した場合、減価償却は行われませんので注意が必要です。

有形固定資産の事後測定にも原価モデル再評価モデルがありましたが、投資不動産の公正価値モデルと有形固定資産の再評価モデルは混同しやすいので、注意しましょう。

有形固定資産の事後測定の詳細は、第4回「有形固定資産」をご覧ください。

他の資産科目との振替

棚卸資産から投資不動産への振替や、投資不動産から自己使用不動産への振替など、不動産の使用目的が変更された際は、分類を振り替える必要があります。

不動産の分類ごとに評価方法が違いますので、振替の際に再評価を行う必要があります。

ACCAの試験では、主に以下の4種類が登場します。

投資不動産からの振替

自己使用不動産への振替

投資不動産を自社のオフィスや工場として使用することになった場合、投資不動産の定義に合わなくなるので、自己使用不動産(有形固定資産、IAS第16号)に振り替える必要があります。

この際、振替の日における公正価値で再評価し、その後通常の有形固定資産と同様に減価償却を行います。

棚卸資産への振替

投資不動産の賃貸期間が終了し、通常の営業過程で売却する不動産となった場合、棚卸資産(IAS第2号)に振り替える必要があります。

この際、振替の日における公正価値で再評価し、その後通常の棚卸資産として扱い、売却した際に売り上げ原価となります。

投資不動産への振替

自己使用不動産からの振替

自社のオフィスや工場として使用していた不動産(自己使用不動産、IAS第16号)を外部の企業等に賃貸することになった場合など、その不動産は投資不動産に該当するので振り替える必要があります。

この際、第4回「有形固定資産」で説明している再評価モデルを使って再評価し、その後投資不動産として取り扱います。

棚卸資産からの振替

通常の営業過程で売却する不動産(棚卸資産、IAS第2号)として保有していた不動産を外部の企業等に賃貸することになった場合など、その不動産は投資不動産に該当するので振り替える必要があります。

この際、振替の日における公正価値で再評価し、その後投資不動産として取り扱います。公正価値で再評価した際の利得又は損失は、その期の損益として認識されます。

単語帳

投資不動産Investment property
賃貸料Rental
値上り益Capital appreciation
当初測定Initial measurement
購入価格Purchase price
直接帰属費用Directly attributable costs
事後測定Subsequent measurement
原価モデルCost model
公正価値モデルFair value model
振替Transfer
棚卸資産Inventory
自己使用不動産Owner occupied property
通常の営業過程Normal course of business

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