BTの試験範囲や配点など、シラバスの概要については、以下の記事でも説明しています。ここでは、試験範囲の内容を、ACCA公式のスタディガイドを用いて詳しく説明します。シラバスはこちらからダウンロードができます。
BTは、基本的にコーポレートガバナンスなどの組織構造や役割の理解や、CSR、経営学、経済学、ITなどの一般教養といった内容になります。
コンテンツ
BTの試験範囲とスタディガイド
BTの概要では、ACCA発行のシラバスに記載されている試験範囲を、英語でそのまま載せています。ここでは日本語の対訳を含めて記載します。
またシラバスでは、各パートのスタディガイドを発行していて、各パートの項目ごとに、細かく押さえておく必要があるポイントを説明しています。全てを列挙すると長くなるので、ある程度まとめて記載しています。
A. ビジネス組織、ステークホルダー及び外的環境
(The business organisation, its stakeholders and the external environment)
各項目にわたって細かく記載されていますが、パートAでは特に株主や経営者、従業員、取引先、地域社会など、組織のステークホルダー(利害関係者)の分類と、Mendelowマトリックスを使用して組織への影響を簡単に評価できる必要があります。
また、ビジネスの分析にあたり、SWOTやポーターのバリューチェーン、5フォースモデルなど、基本的なフレームワークの意味や使い方を押さえておきましょう。
- ビジネス組織の種類と目的
(The purpose and types of business organisation)- ビジネス組織(business organisation)の定義と組織される理由
- 様々なビジネス組織の共通又は異なる特徴
- ビジネス組織に関わる産業や商業セクター
- 次のビジネス組織の違いと主要な特徴
- 営利組織
- 非営利組織
- 公共組織
- 非政府組織
- 共同組織
- ビジネス組織におけるステークスホルダー
(Stakeholders in business organisations)- ステークスホルダーの定義と異なるビジネス組織におけるエージェンシー関係の違い
- 内部、外部及び関係するステークホルダーの定義と組織への影響
- ステークスホルダーのグループ分類とそれぞれの目的
- 各ステークスホルダーグループ間の関係と利益相反の説明
- 各ステークスホルダーグループの影響力とMendelowマトリックス(図)を使用した評価
- ビジネスにおける政治的、法的要因
(Political and legal factors affecting business)- 政治体制と政府方針が組織に与える影響
- 国際司法機関、国家及び地方政府などの法的権限
- 雇用者保護に関わる法律とそれが組織やマネジメントへ及ぼす影響
- 情報保全、労働安全衛生に関わる法律のコンプライアンスに対する個人や組織の責任
- 商品販売や単一の契約などの消費者保護の原則
- マクロ経済的要因
(Macroeconomic factors)- マイクロ経済政策の定義とその目的
- 経済における個人、世帯、ビジネスに影響するビジネス活動の決定要因
- 次の要因が個人、世帯、ビジネスに与える経済的影響
- インフレーション
- 失業
- スタグフレーション(経済停滞)
- 国家間の賃金格差
- 経済繁栄の最大化のために政府や国際機関が実施する主要な経済政策
- 個人、世帯、ビジネスに与える財政・金融政策
- ミクロ経済的要因
(Micro economic factors)- 商品やサービスの需要と供給の概念
- 需要の価格弾力性(Elasticity of demand)と代用品と補完品の影響
- 短期・長期的なコストの経済的行動
- 各市場の定義
- 完全競争市場(Perfect competition)
- 寡占市場(Oligopoly)
- 独占的競争市場(Monopolistic competition)
- 独占市場市場(Monopoly)
- 社会的、人口統計的要因
(Social and demographic factors)- 社会や人口統計のトレントがビジネスと経済に及ぼす中長期的な影響
- 社会構造、価値、姿勢、思考の変化がもたらす影響
- 中長期的な人口構造の変化の影響に対する政府の対応
- テクノロジー的要因
(Technological factors)- テクノロジーの変化が組織構造や戦略に及ぼす影響
- 小型化
- 簡素化
- アウトソーシング
- ITの影響とビジネスプロセスにおける情報システムの発展及びそれに伴う経理担当者の役割の変化
- テクノロジーの変化が組織構造や戦略に及ぼす影響
- 環境的要因
(Environmental factors)- 物理的環境によるビジネスへの影響
- 環境への影響の最小化とビジネスの有効性・効率性の最大化
- ステークホルダーに対する経済的持続可能性の恩恵
- 競合的要因
(Competitive factors)- マーケットにおけるビジネスのStrengths、Weaknesses、Opportunities、Threats(SWOT)分析(図)と競合優位性
- ポーターのバリューチェーン(図)の主要素とバリューネットワークの意味
- ポーターの5フォース分析の各要素やフォースが産業やセクター内での競争レベルに与える影響
- ビジネス活動が競争に与える影響
- 購買
- 生産
- マーケティング
- サービス
B. 組織構造、機能及びガバナンス
(Business organisational structure, functions and governance)
パートBでは、特に社内・社外取締役や各委員会の目的や機能を理解し、各組織におけるベストプラクティスを押さえておく必要があります。
- 公式組織・非公式組織
(The formal and informal business organisation)- 非公式組織の公式組織との関係
- 非公式組織がビジネスに与える影響
- 組織構造とデザイン
(Business organisational structure and design)- ミンツバーグの組織の構成要素(図)と公式組織の構成の違い
- 起業家
- 機能
- マトリックス
- 区分(地理別、製品別、顧客タイプ別)
- 無境界(バーチャル組織、中空組織、モジュール組織)
- 組織構造の基本コンセプト
- 所有と経営の分離
- 指揮と運営の分離
- 命令系統
- 伝統的な組織とフラットな組織
- アウトソースとオフショアサービス
- シェアードサービス
- アンソニー・ヒエラルキー(図)に関連した戦略、戦術、運用の各レベルの特徴
- 中央集権組織と分権組織の利点・欠点
- 主要部署の役割と機能
- 研究開発部門
- 購買部門
- 調達部門
- サービス提供部門
- マーケティング部門
- 管理部門
- 財務部門
- マーケティングの役割
- マーケティングの定義
- マーケティング・ミックス(図)
- 戦略計画とマーケティング計画の関係
- ミンツバーグの組織の構成要素(図)と公式組織の構成の違い
- 組織文化
(Organisational culture in business)- 組織文化の定義とそれを形作る要素
- 下記著者の影響
- エドガー・シャイン:Determinants of organisational culture
- チャールズ・ハンディ:Four cultural stereotypes
- へールト・ホフステード:International perspectives on culture
- 各種委員会
(Committees in business organisations)- ビジネス組織における委員会の種類と目的
- 委員会の利点・欠点
- 委員長と議長の役割
- ガバナンスと社会的責任
(Governance and social responsibility in business)- コーポレートガバナンスにおけるエージェンシー
- コーポレートガバナンスと社会的責任の定義と現代組織における重要性
- コーポレートガバナンスとCSRを適切な基準を保つ責任
- コーポレートガバナンスのベストプラクティス
- 社内取締役と社外取締役
- 報酬委員会
- 監査委員会
- 監督機関
- ステークスホルダーのニーズ分析を通した社会的責任の目的
- ステークスホルダーに対する社会的・環境的責任
C. 会計、報告、コンプライアンス、統制、テクノロジー、セキュリティー
(Accounting and reporting systems, compliance, control, technology and security)
パートCでは、組織における財務会計の役割や、内部統制の重要性について押さえておく必要があります。内部統制に関わるマネジメント層の役割については、特に重要なポイントになります。
- 会計と他の組織機能との関係
(The relationship between accounting and other business functions)- 調達、製造、マーケティングなどの主要部署と会計部署の関係
製造と製造計画の財務的検討事項 - マーケティングに関わる財務的問題
- 効果的なサービス提供のコストとベネフィット
- 調達、製造、マーケティングなどの主要部署と会計部署の関係
- ビジネス組織における会計と財務の機能
(Accounting and finance functions within business organisations)- 組織の方針、プロセス、パフォーマンスの体系化、実行、統制に関わる会計の役割
- 財務情報の記録、体系化、処理及び財務諸表作成などの財務会計部署の役割
- 管理会計とパフォーマンスマネジメント機能
- 原価と売上の記録と分析
- 意思決定に関わる管理会計情報の提供
- 予算策定と予感管理
- 税負担管理、資金調達やリスクマネジメントなどの財務・資本管理
- 内部監査と外部監査の役割の違い
- 会計及び監査に関わる法規制の原則
(Principles of law and regulation governing accounting and auditing)- 会計記録保持や財務諸表監査などの法的要件と不遵守の結果
- 国際会計機関による報告基準とモニタリング
- 組織から提出される内部・外部の財務情報のソースと目的
(The sources and purpose of internal and external financial information, provided by business)- 財務報告書の役割
- 損益計算書(Statement of profit or loss)
- 財政状態計算書(Statement of financial position)
- キャッシュフロー計算書(Statement of cash flows)
- 持続可能性と統合報告(Sustainability and integrated reports)
- 管理会計報告の目的
- 原価予定表
- 予算
- 予算差異報告
- 財務報告書の役割
- 財務システム、実施手順及び関係するITアプリケーション
(Financial systems, procedures and related IT applications)- 組織の使用システムと組織目的や方針におけるシステム要件
- 購買、請求、給与、与信管理、現金及び資本管理などの財務システム
- 経理システムなどの欠点、エラーの発生や非効率
- 全体的な効率化とエラーや不正防止のための改善点
- ITシステムにおける適切な統制
- スプレッドシート、データベースシステム、経理システムなどのビジネスにおけるITシステム
- 財務システムの自動化における利点と限界
- 内部統制、アクセス権限、データ保全及びコンプライアンス
(Internal controls, authorisation, security of data and compliance within business)- 内部統制と内部チェック
- 内部財務統制の重要性とマネジメント層の責任
- 効果的な内部財務統制の特徴
- 内部統制に使用されるITや情報システムの種類
- 全般統制とアプリケーション統制
- マネーロンダリングなどの不正行為とその防止策
(Fraud and fraudulent behaviour and their prevention in business, including money laundering)- 不正の種類と発生確率の高い環境及び不正の結果
- 不正発見と防止プロセスにおけるマネージャーの役割と責任
- マネーロンダリングの定義と実例及び発見・防止法、当局への報告
- 財務テクノロジー(Fintech)の会計システムに与える影響
(The impact of Financial Technology(Fintech)on accounting systems)- 会計におけるクラウドコンピューティングの利点
- 経理システムの自動化とAI化による影響
- ビッグデータとデータ分析の応用による経理・監査業務の有効化
- ブロックチェーンと分散台帳の特徴と応用
- サイバーセキュリティとサイバー攻撃によるリスク
D. 個人・チームに対するリーダーシップ及びマネジメント
(Leading and managing individuals and teams)
- リーダーシップ、マネジメント及びスーパービジョン
(Leadership, management and supervision)- リーダーシップ、マネジメント、スーパービジョンの定義と違い
- マネジメントの性質
- ファヨール、テイラー:Scientific/classical theories of management
- マヨ:The human relations school
- ミンツバーグ、ドラッカー:The functions of a manager
- マネジメントの権力と責任
- リーダーシップの状況、機能、緊急自体でのアプローチ
- リーダーシップスタイル
- 採用と選考
(Recruitment and selection of employees)- 採用と選考の重要性
- 採用と選考プロセスとプロセスの各ステージ
- 採用と選考プロセスに関わる人員の役割
- 必要な自在確保に関わる方法論とそれぞれの利点・欠点
- タイバーシティーと機会均等方針の目的と利点及び実務ステップ
- 個人及びチーム行動
(Individual and group behaviour in business organisations)- 個人及びチーム行動の主な特徴
- 個人及びチームの組織目的達成への寄与
- 個人及びチームの業務への取り組み
- チーム編成、成長及びマネジメント
(Team formation, development and management)- グループとチームの違いとそれぞれの目的
- チームビルティングと個人成長におけるマネージャーの役割
- ベルビンのチームワーク理論
- タックマンのチームビルティング手法
- 効率的・非効率的なチームの特徴
- チームビルティングやチーム効率の最大化のためのツールや手法
- 個人及びチームのモチベーション
(Motivating individuals and groups)- モチベーションの定義と組織、チーム、個人に対する重要性
- 固有及び付帯的な報酬の種類
- 報酬システムがチームや個人のモチベーションにもたらす影響
- 人材育成
(Learning and training at work)- 人材育成の重要性とHR部署、マネージャーの役割
- ニーズの識別、目標設定、プログラム設計、実施と評価
- トレーニング、育成、教育の特徴と利点
- 個人パフォーマンスのレビューと評価
(Review and appraisal of individual performance)- パフォーマンス評価の定義や目的、重要性、効果的なプロセス
- 効率的な評価の障壁と克服方法
E. 自己能力発揮及びコミュニケーション
(Personal effectiveness and communication)
- 自己能力発揮の手法
(Personal effectiveness techniques)- タイムマネジメントの重要性、障壁及び克服方法
- 自己能力発揮の改善におけるITの役割
- 能力不発揮の結果
(Consequences of ineffectiveness at work)- 個人やチームが能力不発揮に陥る状況と業績への影響
- 能力開発フレームワーク及び自己成長
(Competence frameworks and personal development)- 能力開発フレームワークの特徴
- 継続的な人材育成が個人のパフォーマンス向上に与える影響
- コーチング、メンター、カウンセリングの目的と利点
- 個人育成の定型化、実施、メンター、評価
- 対立の原因、解決手法及びリファーラル
(Sources of conflicts and techniques for conflict resolution and referral)- 対立が発生する状況
- 対立が個人や組織のパフォーマンスに与える影響
- 対立の対応方法
- コミュニケーション
(Communicating in business)- コミュニケーション手法の養蜂
- 情報の種類が組織の戦略、戦術及び運用に適用する目的
- 高品質な情報の特性
- 送信者、受信者、メッセージ、フィードバックなどの簡単なコミュニケーションモデル
- フォーマル及びフラットなコミュニケーションの重要性
- 非効果的なコミュニケーションの結果
- 効果的なコミュニケーションの特性
- 効果的なコミュニケーションの障害と解決ステップ
- 主要なコミュニケーションパターン
F. 会計及びビジネスにおける職業的倫理観
(Professional ethics in accounting and business)
- 倫理的行動の原則
(Fundamental principles of ethical behaviour)- ビジネスにおける倫理の定義と重要性
- IFAC(IESBA)の倫理規定の原則及び例
- 誠実性(Integrity)
- 客観性(Objectivity)
- 専門家としての能力(Professional competence)
- 守秘義務の保持(Confidentiality)
- 専門家としての行動(Professional behaviour)
- 組織の倫理的行動の促進と例
- オープンな職場
- 信頼
- 公正
- 敬意
- エンパワーメント
- 説明責任
- 公共の利益に対するコンセプト
- 会計専門家の倫理、職業基準の促進における規制団体及び専門家団体の役割
(The role of regulatory and professional bodies in promoting ethical and professional standards in the accountancy profession)- IFAC(IESBA)やACCAなどの団体が設定する倫理規定や行動規定の目的
- 会計士団体等による倫理的認識と不正・非倫理的行為の防止と処罰
- 専門家とその他の職業の違い
- 倫理的行動の促進に対する会計の役割
- 組織内や関係者による不正。非倫理的行為の報告
- 企業の倫理規定
(Corporate codes of ethics)- 企業倫理規定の定義と主要な内容、設定の利点
- 倫理的対立とジレンマ
(Ethical conflicts and dilemmas)- 倫理的対立が起こりうる状況
- 倫理的行動に対する脅威
- 職場における倫理的ジレンマが起こりうる状況
- 脅威やジレンマに対する予防策
まとめ
Business and Technology(BT)は、Management Accounting(MA)、Financial Accounting(FA)と並び、ACCAの13科目のうち最も基本的な科目の一つです。
ステークスホルダーの影響や、各種組織における委員会の役割、企業倫理、社外取締役の重要性や、それに関わる会計・ITの役割など、Professional Moduleの試験でも問われる基本的な知識となります。
BTを合格するためには、シラバスの内容を隅々まで暗記する必要は全くありませんが、MendelowマトリックスやSWOT分析、ポーターの5フォースなどの基本的なフレームワークと使用方法は押さえておきましょう。
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